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第4回交流会【レポート】ヘルスケア分野におけるサイバネティックアバター実証事例とこれから(12/5開催)
サイバネティックアバター※による誰もが自在に活躍できる社会(アバター共生社会)の実現に向けて、第4回の情報交流会が開催されました。
今回は「ヘルスケア分野におけるサイバネティックアバター実証事例とこれから」がテーマでした。
※遠隔操作ができる「身代わりロボット」
PROGRAMプログラム
12月5日(月)開催
- 15:30~ :ご挨拶
- 15:35~ :ヘルスケア分科会における参画企業の取り組み
- 16:00~ :発達障害者へのロボットを用いた支援
- 16:40~ :ディスカッション
REPORTレポート
ヘルスケア分科会における参画企業の取り組み
BCC株式会社 代表取締役社長
伊藤 一彦 氏
ヘルスケア分科会では、ヘルスケア関連の現場で、サイバネティックアバター(CA)技術をどのように役立てられるかを議論し、社会実装に向けて検討しています。
ヘルスケア分野でのアバター活用に向けて、幹事企業であるBCC株式会社のヘルスケアビジネス事業の紹介とともに、分科会の参画企業における様々な取り組みについて、事例を中心に紹介しました。
各種事例紹介と参画企業からの声
・音楽×レクリエーション介護士 /株式会社エクシング
「介護施設向け「健康王国DX」というカラオケ機器に、リハビリやレクリエーション機能を持たせ、ビジネスを展開している。
こうした事業の延長線上に、介護施設のアバター活用が期待できると思う。」
・歩く×レクリエーション介護士 /AYUMiEYE
早稲田エルダリーヘルス事業団が高齢者に提供している、最先端の歩行能力解析デバイス「AYUMiEYE」。
「高齢者に介護レクを実施した後に、実際に歩行が改善されたかの効果を測定し、高齢者の健康にどのくらい寄与したかを数値化できるという面が、今後のアバタービジネスにおいても活用が期待できるのではないか。」
・口腔×レクリエーション介護士 /8カンテレ
関西テレビ所属のアナウンサーが、レクリエーション介護士資格を取得して、アナウンサーならではの口腔体操をコンテンツ化。
毎週のTVメディア配信に加え、オンライン配信も実施。
「こうしたハイブリッドな側面を応用し、アバター活用においても、バーチャルとリアル両方のメリットを活かし、生活に近い場所でのサービス展開ができるのではないか。」
・お笑い×レクリエーション介護士 /吉本興業
吉本所属の芸人がレク介護士2級を取得し、「お笑い」と「介護レク」を融合したレクリエーションプログラムの開発・実施について、解説しました。
各地域に在住している芸人(地域住みます芸人)も約30人ほどが資格を取得しており、今後はそれらを軸に地域連携を画策しています。
また、介護現場へのオンライン配信事業にも取り組んでいます。中でもオール阪神さんのオンラインコンサートは1000を超える介護施設に視聴していただきました。
「コロナ禍を経て、介護施設のインターネット環境も整い、動画視聴やオンライン配信への障壁がなくなった。それらの背景から鑑みても、今後、介護関連でのアバターが活躍するシーンは多くあると思う。」
発達障害者へのロボットを用いた支援
長崎大学 医学部 未来メンタルヘルス学
熊崎 博一 氏
現在、発達障害者は人口の約6.5%との報告もあり、社会問題となっています。 これらの背景から、発達障害者のロボットへの親和性を期待し、ロボットセラピーの予備的研究が世界各地で行われ、エビデンスも蓄積されてきています。
熊崎氏は、発達障害者におけるロボットの活用に長きに渡り取り組んでいます。
今回は、現在まで行ってきた発達障害者へのロボット研究について紹介しました。
・ロボット研究を始めたきっかけ
熊崎氏は、児童精神科病棟を新規立ち上げ経験から、従来の精神科治療は基本的に「回復」を目標に治療を行うが、子供の発達障害については、それだけでは足りないことに気づいたといいます。 子供の発達障害の診療は、障害を「癒す」とともに、その期間も「発達・成長」させなければならない。
そして、熊崎氏がロボットに興味を持ったきっかけは、病棟の中学生に対して行った性教育シーンでのこと。 性というデリケートな話題を対面で行うことのは、教えられる側も教える側もかなりの負担です。そこでパペットを使い、あたかもパペットが性教育の話をしているという擬似シチュエーションを作り出したところ、両者の負担が軽減したそうです。
この経験から「発達障害の診療現場で、ロボット活用の可能性を感じていった。」と話していました。
・自閉スペクトラム症(以下ASD者)の特徴
ASD者は、コミュニケーションが苦手だったり、変化に適応しずらい、それが故に社会性がないといった特性があります。 しかし同時に、デジタル技術への親和性が、健常者と比べて高いと注目を集めています。
・児童精神医学の現状
その専門性の高さから、児童精神学の医師は不足傾向にあります。 そして、世界的な医療傾向からみても、精神学において、生物的な知見が揃っていない中での薬物療法は低迷しており、代わりにアプリ開発などが進んでます。
・研究目的
これらを背景に、
- 児童精神科医にしかできない仕事
- ロボットでも代用できる仕事
- ロボットの方がむしろ得意な仕事
・実際の研究
ASD者の方に対して実際に行った研究を、いくつか紹介しました。
・ASD者へのロボットを使った会話トレーニング
ASD者の中には、会話が困難なほど、症状が重い子供がいます。 そうした子がコミュニケーションの訓練として、遠隔操作ロボットと通じて、人との会話を繰り返し行うことで、どのような効果があるのか検証を行っています。
また、人の表情や声の変化などに敏感な子もいるので、感情に左右されず一定のトーンで話すロボットには安心感を抱きやすい。家族ともほとんど会話をしないの子の場合でも、ロボットの質問には前向きに答える様子が見られ、「こんなことを考えていたんだ。」と家族が驚くといった事例もあるそうです。
・ASD者へのアンドロイドを使った、就職面接トレーニング
ASD者は、モノと人の認識区別がつきにくいという特性があるため、目を合わせたり、人の表情を読み取ったりすることが苦手です。そこで、ASD者がアンドロイドとの会話を通じて、コミュニケーションの練習をしています。
加えて、面接官役もASD者が行います。 相手の視点に立つことが苦手なASD者が、アンドロイドを操作することで、面接官の擬似体験を通じて、相手が何をどのように考えて面接を行っているのか理解しやすくなるといった事例もあります。
この他、アバター使用によるVR面接訓練や、自治体が実施しているような各一的な対応を求められる子どもの発達健診などでのアバター活用についての事例紹介もありました。
・登壇まとめ
熊先氏「ロボット技術は、患者様とのコミュニケーションを提供できるまでに発展してきています。 精神科医療の需要が増大の一途を辿る中、今後は今まで以上に伝統的精神医学から学びながらも、最新の知見をどん欲に吸収することが期待されています。」
「ロボットは特にASD者との相性が良いです。ロボットを理解していくことで、精神医学への理解、精神医学の発展につながると期待されています。」
ディスカッション
登壇者である伊藤氏・熊崎氏と、宮下氏によるディスカッションを行いました。
各自に「アバター活用の可能性」というテーマを投げかけたところ、
伊藤氏「介護現場は、働く人が足りない状況が長年続いている。
アバターがコンテンツと一緒に広がることで、介護現場での働き手の負担が減っていくことを期待しています。」
熊崎氏「今後の医療におけるコアテーマは、デジタル・訪問診療・個別化。これらを鑑みても、アバターが医療の現場で役に立つ可能性が非常に高い。」
宮下氏「ロボットが行った方が良いこと、人間が行った方が良いことをうまく組み合わせて働くことができると、新しい形の社会参加方法が生まれる。
そこが、リアルとバーチャル両方の空間の中で動き回れるアバターの可能性につながるのではないかと思う。」
とそれぞれの見解を話しました。
さらに宮下氏は
「本プロジェクトでは、生産性向上と社会参加がキーポイント。
従来、自動化して人手を減らして生産性を上げる、という視点で話をされることが、アバターを活用して、さまざまな人が社会参加できるようになることで、個人の生産性が上がり、会社の生産性があがり、社会生産性が向上する、という図式が生まれる。これこそが、私たちがアバター共生社会です。」
と未来像を語りました。
今後も情報交流会を通じて、このような事例を多く紹介していきます。
アバターへの知見を深め、自社ビジネスでどのようにアバターが活用できそうか、考えるヒントにしてください。
情報交流会は定期的に実施しています。
情報をキャッチしたい方は、iRooBOセミナー・イベントページでチェックしてください。
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<参考>
ムーンショット型研究開発事業
「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」
https://avatar-ss.org/index.html
BCC株式会社
https://www.e-bcc.jp
BCC株式会社 スマイル・プラス事業部
https://smile-plus.co.jp
長崎大学病院精神神経科学教室
療科学専攻「未来メンタルヘルス学分野」
https://www.med.nagasaki-u.ac.jp/psychtry/miraimental.html